マイコンPID制御自作ふ卵器でウズラが孵化!

ウズラの卵が孵化しています。本日13匹生まれました!まだまだ生まれそうです。孵化は自作のふ卵器で行いました。発泡スチロールの中にミニヒーターを改造したものとサーミスタ(温度で抵抗が変わる素子)を入れて外からマイコンでPID制御しました。

自作ふ卵器。マイコンで温度制御

ふ卵器の外観です。マイコンにつながっている温度センサーとは別に2つの温度計をふ卵器の2か所に取り付けています。温度計は最大値と最低値が記録できるちょっといいやつを使いました。2つ使っているのはふ卵器ボックス内での温度の偏りを監視するためです。空気の流れが悪いと場所によって温度差が2度以上出てしまうのでそれを調べるために複数個の温度計を使いました。

自作ふ卵器の内部です。ヒーターと温度センサーとマイコンが設置されています。

こちらがふ卵器内部です。右の熱源は市販の足元ヒーターを分解して加温モジュール(300W、日本製)を取り出して利用しました。2000円程度で手に入ったのでまあ、ふ卵器買うよりは安いですね。ちなみに加温モジュール自体はアマゾンなどでも販売しています(made in中華なので火災に注意)。マイコンはarduinoのesp wroom02を使っています。プログラミングのほうは別記事に掲載予定として、この記事ではふ卵器でのウズラ孵化概要を紹介したいと思います。

孵化までのアウトライン

①温度37.5±1度、湿度50±20%の恒温曹 (温度調節した発泡スチロールなど) を用意し、卵を投入する。

②1日最低4回、6時間おきの転卵を14日間行う。

③15日目から 恒温槽を温度37.5±1度、湿度80%にする。

④17日目に孵化。孵化後羽が乾いた個体から別の飼育ケース(30±5度)に移し替える

孵化に必須の作業 ”転卵”

卵を傾けるために木の棒を使います
卵パックの下に木の棒を入れて傾斜を作ります。

ウズラの卵を含め、鳥の卵を孵化させる際に必要なのが転卵作業です。卵の向きを数時間おきに変化させる作業でこれをしないと孵化しません。写真のようにウズラの卵の容器の下に木の棒を入れて傾斜をつけることで転卵します。傾斜角は30度以上、さらに卵自身も傾かせて合計で60度以上傾斜するようにしてください。ちなみに孵化が期待できる最低転卵角は45度以上です。木の棒を左右交互に入れることで毎回傾きを逆にしてください。もちろんこの作業は恒温曹(温度調節した発泡スチロールなど)の中で行います。

なぜ転卵が必要かというと、転卵しないと卵の内容物が1か所に固まってだめになってしまうんです。転卵は1時間おきに行うのが好ましい(ふ化率を上げる意味で)ですが、手動で行う場合は6時間おきが現実的なラインで、この頻度が孵化の可能性がある限界です。これ以上転卵期間を延ばすと孵化しないと思います。転卵を頻繁にできず低ふ化率が期待される場合は卵の個数を増やして対応しましょう。管理人は6時間手動転卵だったので、ふ化率が低いことを考慮して30個の卵を用意しました。また、冬に孵化させる場合は著しくふ化率が下がる(卵が5度以下にさらされると死んでしまうので輸送途中にすでに死んでいることが多い)ので卵はよりたくさん用意したほうがいいでしょう。管理人は大寒の2月初めに孵化開始したこともあって余裕をもって30個買いました。

孵化予定日3日前から湿度を上げる!

辛い転卵作業は14日後から解放されます。このころにはもう卵の中に毛の生えたウズラのヒナができています。孵化予定日まで湿度をグンと上げます。湿度を上げることで卵の表面を柔らかくしてヒナが殻を破りやすくします。ここで湿度が十分でないとヒナが卵から出てこれずに死ぬので注意です。湿度80%と書きましたが、100%でいいです。十分に面積のある薄い容器に水を浅く入れて恒温槽に設置します。湿度は容器の表面積にほぼ比例するので、いくつか容器を試してベストのものを採用しましょう。管理人は天ぷら用アルミトレーを使いました。あと、ヒナが生まれた後、水の入った容器に落ちて溺死しないように容器の上に金網などを載せましょう。

ウズラ孵化の瞬間

生まれたら、温度30度程度の容器に移し、レフ電球や白熱球でヒナを放射加温する。

孵化直後ウズラ飼育装置
加温用にレフ電球設置

孵化後のヒナは寒さに大変弱いため、加温された環境で1週間飼育します。加温にはヒーター(温風)ではなく、レフ球や白熱電球を用いましょう。LED電球は絶対ダメです。中にフィラメントが入っていて黒体放射によって発光するタイプの電球(光に手をかざすとほんのり熱を感じる)を使います。レフ球から発せられる光には、体を温める遠赤外線、昼間だと認識させるための可視光、ヒナの骨を丈夫にするためのビタミンD合成に必要な紫外線がすべて含まれています。ヒーターだと後者2つが不足するので健康なヒナを育てたいならレフ球です。実際養鶉場ではヒナの育成にレフ球が使われている事が多いです。レフ球を使う利点はほかにもあります。飼育室内の温度はレフ球からの距離が離れるにつれて低くなるので、ヒナが快適だと思う温度の場所に自ら移動することができます。ヒーター(温風式。ヒヨコ電球は例外)だとこれができません。あと飼育ケース内に木の板などで影を作れば(下の写真参照)ヒナが温まりすぎたときの避難所として働いてくれるのでオススメめです。

木の板を使ってヒナが温まりすぎたときに避難できる影を作る。

注意点として、レフ球がヒナから遠すぎると加温が不十分になります。加温が不十分かを見分けるサインとして、”ヒナ団子”があります。ヒナは寒くなると自分の体温を維持するためにほかのヒナにくっつこうとしてヒナ団子が出来上がります。これはヒナが圧死する原因にもなるのでレフ球をもう少し近くに設置しましょう。

エサはすり餌など粉末状のものを直接床にばらまきます。水は1センチ程度の高さの低い容器に薄く入れます。ペットボトルのキャップは若干高さがありますが、許容範囲です。エサと水は絶対切らさないように注意しましょう。ここまで頑張って育ててきたのですから。レフ球24時間点灯で7日間、餌も水も与え世話をしましょう。7日後には3倍の大きさになります。ここまでくれば死んだりすることも少なくなり一安心でしょう。ウズラは1ヶ月で大人になって2か月目には卵を産み始めます。それまで大切に飼育したいですね!

孵化後の元気なウズラのヒナ