【ハエが世界を救う!?】食糧危機にハエで立ち向かう日本のベンチャー企業

イエバエが切り開く0.5次産業

最近アグリテック界隈で話題になっている企業がある。 去年のアグリテックグランプリで川崎重工業賞 、テッククランチJAPANのピッチコンテストで最優秀賞を受賞して一躍有名になった(株)ムスカというハエを使ったスタートアップ企業だ。

同社のビジネスモデルは非常にシンプルで、牧舎で出る糞尿を買い取って、イエバエの力で有機肥料化して肥料を売る、それと同時にハエの幼虫も乾燥加工して家畜・養殖用飼料として販売する。というものだ。肥料はキロ100円程度で販売可能だといい、現在売られている有機肥料よりも安いそうだ。タダ同然の糞尿から価値を生み出すシンプルだけれどもすごいアイディアだ。(テッククランチJAPANピッチコンテストでのプレゼンより)

イエバエ
イエバエ(wikipedia より)

日本では年間8300万トンの家畜糞尿が出ている。それらが有機肥料と飼料に変われば社会的にすごくインパクトがある。 糞尿以外にもスーパーやレストランで出る生ごみも使えるだろうし、循環型エコシステムを実現した究極のエコ企業だと言える。

この企業のミソは糞尿を分解する効率を品種改良(45年間で1100代の交配作業を行っており現在1200代目に突入だそう)により通常のイエバエの何倍にも高めたイエバエだ。旧ソ連の研究所から買い付けて20年にわたり代表が大事に守ってきたハエだという。このハエがどれくらいすごいかというと、通常糞尿を肥料にするのに3か月かかるところを1週間でいいという。

ウジ虫のサナギ。案外清潔そう!?

同社は1次産業である農・魚・畜産業に必要な肥料と飼料を生産する”0.5次産業”の分野で、昆虫を使って世界をリードしていくとのこと。今後の展開が楽しみだ。

自給ラボ管理人の個人的意見

 ①近所のスーパーで生ごみをもらってきてイエバエ全自動糞処理ボックスの中に入れると家畜用の餌が出てくる。それを部屋で飼っている鶏やウズラにあげる。環境を守ると同時に食料がタダで手に入る世界を実現できるかもしれない。同社のハエは自給ラボ管理人もかなり注目していて、今年は実際にイエバエを飼育して遺伝子操作や交配で品種改良しようと計画しているところだ。

②ウジ虫を本当に家畜が食べるのか、ということが懸念点。これは試してみないとわからないので同社からサンプルを買い付けてラボのウズラにあげてみる予定だ。記事にもする予定なので楽しみにしていてほしい。

ウズラはウジ虫を食べるのか?
ウズラ ”僕は結構グルメずら!”

③経営が上手くいのか。この企業の優位性というのが、45年間かけて開発してきたイエバエだ。これが盗まれてしまうとだれでも同じビジネスができてしまう。乾燥した幼虫が商品になっているので、そのDNAを解析して遺伝子操作で似たような性質かそれ以上の能力をもったハエを生み出すことは容易だ。ハエの飼育装置や特定遺伝子発現促進の方法に関しては特許で守れても、ハエそのものは”自然の物産”だから基本的には特許で保護できない(品種改良種の烏骨鶏を飼育しても特許侵害じゃないのと同じ)だろう。肝心のハエが実質オープンソースな状態で他社との優位性をどう保っていくのか・・・・今後の展開が気になる。