電気で栄養を自給するスーパー細菌が見つかる

生産者の2つのスタイル:光合成と化学合成

 生命には、植物など 栄養を自ら作り出せる生産者と、栄養を食によって賄う消費者がいる。植物が光エネルギーを使って二酸化炭素から栄養(デンプン)を作り出す生産者であるという話は以前にしたとおりだ。植物が使う光合成とは別の方法で栄養を作り出す生産者が存在する。代表的なものに硫黄細菌がある。彼らは光エネルギーではなく硫化水素を酸化する際に発生する化学エネルギーを使って栄養を自給できる。生存に光が不要なのだ。光による栄養の生産を光合成というのに対して、化学エネルギーによるものを化学合成という。

光合成も化学合成もしないのに増殖するすごい菌!!!!

 生産者が栄養を得る手段は光合成と化学合成の2種類だというのがこれまでの常識であった。しかしそんな常識を覆す、すごい菌が発見されたようだ。(日本・理科研&東京大学, 科学雑誌『Frontiers in Microbiology』 2015より)

 研究報告によれば光が届かない深海に生息する菌で、鉄イオンを化学合成エネルギーとして利用する鉄酸化細菌の一種であるAcidithiobacillus ferrooxidans(A.ferrooxidans)がその菌である。鉄イオンを取り除いた環境で、かつ電気のみがエネルギー源となる環境(培養液に電極を入れて通電)でこの菌を培養したところ、鉄イオンが無いにも関わらず増殖したという。菌は電極を通じて電子を取り出してエネルギーとして利用し、二酸化炭素から有機物を合成できることを発見したのだ。

 この菌が住む深海の底はマグマが噴き出て温度差が激しい環境。そこに伝導性の高い鉱物が転がっていて、温度差で発電しているそうだ(詳しく読んでいないけどおそらくゼーベック効果による発電かと思う)。深海で電気が生み出されている事実にも驚くが、さらにその電気を活用して栄養を合成する細菌がいるとは!!非常に興味深い内容だ。

 もしかしたら深海魚たちはこの細菌が栄養を電気から魔法のように作り出しているおかげで繁栄しているのかもしれない。

生産者の新たなスタイル:電気による合成!

 この発見で、生産者が栄養を合成するスタイルが3つになったことになる。”電気合成”とでもいうのだろうか(管理人は”化学合成の一形態なんじゃないかな、と少し違和感”)。ヒトは現在、植物という光合成スタイルをとる生産者を飼いならしているが、電気合成を行う鉄酸化細菌を飼いならす新たな時代が訪れるかもしれない!